seattle english committee's blog

シアトルコンサルティング株式会社 英語力向上委員会のブログです。社内のグローバル化の一助として有志で活動しています。

さて、教材の話をしよう ~ 文法編 その2

週末のたびに台風に悩まされ、運動の秋の決心も雨に流されている。
ならば読書の秋と思い定めて、舶来の本など読んでみよう。

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こんにちは。中村です。
早い話が「どうせ外に出られないんだし、洋書を読んでみよう」ということです。

「多読」と言って、英語の本を、楽しんで大量に読む学習法があります。
やさしいレベルの洋書をたくさん読み、慣れてきたらレベルを上げていくのですね。

しかし「大人なのに簡単な内容の本を読んでも楽しめない」という方もいるでしょう。
そんな方は、翻訳版が面白かった本の原書を読んでみては。
内容が面白いのは(自分が)保証済み!
プロットを知っているから、お話が途中で分からなくなることもありません!
単語が分からなくても翻訳文を思い出せば、都度、辞書を引く必要もなくなります。

とは言え、より深く英文を楽しむには、
英語の文法やニュアンスを理解できた方が良いのは、確かでしょう。
そこで、今回の教材をご紹介します。

一億人の英文法 すべての日本人に送る「話すため」の英文法

一億人の英文法 ――すべての日本人に贈る「話すため」の英文法(東進ブックス)

一億人の英文法 ――すべての日本人に贈る「話すため」の英文法(東進ブックス)

「話すため」と謳われていますが、もちろんリーディングにもリスニングにも役立ちます。

本書の特徴

・文法用語を極力排除。
・「配置のことば」である英語のルールを、イメージ図と平易な日本語で解説。
・英語を話すときの「ネイティブの意識」を解説。

前回紹介した「ビッグ・ファット・キャット~」と考え方が近いですが、より骨太、より包括的、かつより詳細です。
(著者の大西先生も、相当の決意をもって同書を書かれたと、ブログで告白されていました。)

ここでは、ネイティブの意識について、例を頂きましょう。

「ネイティブの意識」とは?

言葉をアウトプットするときには、何らかの感情があり、イメージを伴っています。

本書では例えば、過去形は「距離感」が意識されているとし、
できごとを「遠いもの」「今と切り離されたもの」としてとらえるところに過去形の特徴がある”と述べています。

このコアイメージをつかめると、学校英語で「仮定法過去」と言われていたものが理解できます。

I wish I had a girlfriend.(彼女がいたらなぁ)
仮定法とは、話し手が「可能性が低い・事実と反している」と思っていることを示す形。(中略)ポイントは過去形の持つ距離感。そこから「現実からの乖離(非現実感)」が生まれる表現となっているのです。
一億人の英文法

これに対し現在形は

現在形の意識は「一体感」。できごとや状態が自分に寄り添っている、包み込んでいる、そうした意識で使われる形。
一億人の英文法

ここから、以下のような派生例につながります。

・現在を含め広く成り立つ状況
 I'm a student.(私は学生です。)

・今まさに展開していく状況(言葉とできごとが同時進行している一体感)
 Here comes the bus. Hurry!(バスが来た。急げ!)

"Here comes the bus."なんて、一体感が理解できるのとできないのとでは、全然味わいが異なってきますね。
「現在形だから“~です”と訳す」「過去形は“~でした”」と定型的に考えると、
イメージやニュアンスの妙を見逃すことがあるわけです。

リーディングへの応用

物語を読むときは、いかに場面に没入できるかが重要です。
ネイティブの意識が理解できれば、一文一文の状況理解が深まり、臨場感のあるものになるでしょう。

私の場合、ハードボイルドミステリーを読むときなど、過去形の「距離感」を強調して味わうようにしています。
そうすることで、物語全体の抒情性や孤高感が増すように感じます。

「文法」は言語の骨格であり、もちろん資格試験のための重要な得点要素でもあります、が。
より英語を楽しむためのツールでもあるのです。
ぜひ皆さんも、楽しむために勉強してみてください。


ではまた、次回お会いしましょう。
次はリスニングについて考えます。



個人的に、ハードボイルドで一番すきな作品はこれです。
趣味が合いそうな方、ご連絡ください。
村上春樹訳はまだ読んでません。
あ、作者と私は同じ誕生日です。